潮田雄一 [JAPAN]
実は今年の初夏に、ここでとりあげた ランタン・パレードのライブを下北沢の
ライブハウスまで見に行きました。 そこには、4組くらいのミュージシャンが出演して
いたのですが、そこで初めて出会ったのが、今日紹介する潮田雄一です。
その日は、彼はギター1本で弾き語りをしていたのですが、ボーカルよりも
ギターを中心としたそのサウンドはユニークなもので、Ben Watt にも通じる雰囲気
をかもし出していました。 全員のライブが終わった後に会場でCDを売っていたので
そこで本人から購入したのが、このアルバム。 彼のソロ名義としては初めての全国
流通盤ということなので、これ以前にも作品はいくつかあるようです。
後にネットで調べて知ったのですが、潮田雄一は「QUATTRO」というバンド
のギタリストとのこと。 このバンドの音は未聴ですが、2004年に結成ということなの
で、キャリアは十分長いようです。
さて、この「水のない海」の話をしましょう。 まずはジャケットに注目。 この
ように本人の顔と風景をコラージュする手法は1970年代のマイナーなSSW に
よく見られるもので、個人的にはこのジャケットに打たれるものがありました。
全12曲が収録されたこのアルバムの冒頭を飾るのは、地下室にいるような
実験的なエフェクトのなかを突き破るハーモニカで始まる「ささくれた風景」。 この曲
は、あえて奥まったような音像処理を施していたりと、意欲的な音づくりが感じられる
仕上がりです。 つづく「フィッシャーマン」はほのぼのとしたフォーキーなサウンド
ですが、潮田雄一ならではの味わいが感じられるのは中盤から後半のモノトーン
な楽曲だと思います。
なかでも「物語」は途中で挿入される管楽器が印象的な佳作。 「睡魔」は
牧歌的なたたずまいが魅力的。 これらの曲に加え「夢をみた」などを聴いている
と、ここにある音楽が日本の音楽だとはにわかに信じがたい気にさせられます。
そこにあるのは、Duncan Browne やErnie Graham の名盤に封印された
良質な SSWの肌触りです。
また、彼のギターが堪能できる「墓場の猫」や「エンディング」といったイン
ストゥルメンタルが効果な順番に配置されているのも見事。 これらの曲は彼の
作曲能力の高さも感じさせます。
なんかベタぼめな感じですが、これほど味わいの深い英国的な SSW が
現在の日本に存在しているというのが驚きです。 本人は、John Fahey に影響を
受けたらしいですが、そうしたルーツ・ミュージックへの関心やレスペクトだけでは
生まれてこない潮田雄一というミュージシャンの個性と才能には、これからも注目
していきたいと思います。
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