SSブログ
前の20件 | -

Nozomi Nobody [JAPAN]


We Are Always a Bit Lonely

We Are Always a Bit Lonely

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Silent Room Records
  • 発売日: 2016/06/15
  • メディア: CD


   なんとも不思議なアーティスト名です。
   気になって、聴いてしまいました。

   Nozomi Nobody の名前を知ったのは、このブログで取り上げた潮田
雄一の twitter でのこと。 来月に吉祥寺の小さな音楽食堂でライブを行うという
告知を目にした時でした。 潮田雄一と同じ場所でライブするということから彼女
のサウンドの方向性はある程度想像がついたのですが、ちょうど流行りの定額
制音楽サイトに加入していることから、検索してみら発見できましたので、会社
でゆっくり聴いていました。

   この「We Are Always a Bit Lonely」は今年の6月に発売された7曲
入りのミニアルバム。 収録時間も25分ちょっと、ということで気軽に接すること
ができるものでした。 全曲、英語のタイトルでしたが、歌詞のほうも全曲英語
で歌われています。 清楚で空気の隙間を感じさせるSSW サウンドは、1970
年代的とも言えなくはないですが、ここまで質素なものは数えるほどのように
思います。 その代表的な事例は、Judee Sill なのでしょうが、いくつかのサイト
でもそのような喩えが使われているようでした。 はかなさで言うと、Susan
Pillsbury に近いものも感じます。

  表面の起伏から、尖った所を削り取ってみたら、かえって素材感が生々
しく伝わってしまって、あわててしまった。 このアルバムと接する第一印象は
こんな感じでしょうか。 まろやかな午後にソファで聴くと、とうとつに睡魔が
襲ってくるかもしれませんが、そんな聴き方も容認されるような洗練された
インテリアのようなサウンドがここにありました。 

  ・・・その無国籍感。 

  それは「誰でもない」と自ら名乗る覚悟とシンクロしているようです。




Peter Broderick [USA]


Colours of the Night

Colours of the Night

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Bella Union (Imp542)
  • 発売日: 2015/05/18
  • メディア: CD



   昨日、市ヶ谷で Peter Broderick の来日コンサートを見に行ってきました。 
予想通りの素晴らしさに、いまだに興奮を抑えきれません。 ルーテル市ヶ谷教会の
ホールは、パイプオルガンが設置されているなど、クラシック音楽向きのもの。 普段は
ポピュラー・ミュージックでの利用は少ないようですが、この会場がまた Peter Broderick
の研ぎ澄まされた音にはぴったりで、素晴らしい音響も含めて、非常に心に残る音楽
体験となりました。

   コンサートはゲストの Brigid Mae Power という清楚な女性 SSW でスタート。
ギターの弦を新しくしたばかりということで、チューニングが上手くできずに、Peter に
お願いしたりと、アマチュアな感じもしましたが、その美しい声にはうっとりしてしまいま
した。 5 歳の男の子の母親ということですが、今度アルバムをじっくり聞いてみたい
と思います。 2曲目に演奏した曲では、Peter をバックコーラスに迎えたのですが、
この曲が秀逸でした。

   Peter Broderick のほうは、予想通りピアノの弾き語り。 ボーカルパートが少
ないために、どこで歌唱が始まるのか、あるいはそもそも無いのかが読みづらい展開
でした。 そんななか、一つ一つの音を大事にする演奏姿勢には、神々しいオーラを
感じ、咳一つできないような緊張感に包まれてコンサートは進行。 途中で、Peter が
客席にまで歩みよって、独唱を続ける場面があったり、Steinways & Sons のグランド
ピアノの中に身を乗り出して歌唱するなど、独特のパフォーマンスにも心打たれてしま
いました。

   アンコールのラストでは、このブログでも 2011 年 3 月に取り上げた名盤「How
They Are」のラストを締めくくる名曲「Hello to Nils」を演奏。 もっとも聴きたかった曲
だけに鳥肌モノでした。 真のミュージシャン、心を震わせる音楽とは、こういうもの
なのだと改めて実感した夜となりました。

   さて、今日紹介するのは、そんな Peter Broderick が2015年にリリースした
バンドスタイルのアルバム。 ドラムスやベースが入り、曲によってはストリングスや
管楽器も参加しており、曲調もバラエティに富んだものとなっています。 耽美的で、
抑制のきいた孤独感あふれるスタイルのPeter Broderick を期待して向かい合うと、
ちょっと意外に感じてしまうかもしれません。 とはいえ、やはり個々のサウンドの
出来栄えはしっかりしており、ソロではない彼の姿も見てみたくなるような、そんな
アルバムです。

  はやくも次の来日を期待しつつ、間違いなく行こうと思っています。



   

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

潮田雄一 [JAPAN]


水のない海

水のない海

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: DE KIT RECORDS
  • 発売日: 2014/02/19
  • メディア: CD


   実は今年の初夏に、ここでとりあげた ランタン・パレードのライブを下北沢の
ライブハウスまで見に行きました。 そこには、4組くらいのミュージシャンが出演して
いたのですが、そこで初めて出会ったのが、今日紹介する潮田雄一です。

   その日は、彼はギター1本で弾き語りをしていたのですが、ボーカルよりも
ギターを中心としたそのサウンドはユニークなもので、Ben Watt にも通じる雰囲気
をかもし出していました。 全員のライブが終わった後に会場でCDを売っていたので
そこで本人から購入したのが、このアルバム。 彼のソロ名義としては初めての全国
流通盤ということなので、これ以前にも作品はいくつかあるようです。
   後にネットで調べて知ったのですが、潮田雄一は「QUATTRO」というバンド
のギタリストとのこと。 このバンドの音は未聴ですが、2004年に結成ということなの
で、キャリアは十分長いようです。

  さて、この「水のない海」の話をしましょう。 まずはジャケットに注目。 この
ように本人の顔と風景をコラージュする手法は1970年代のマイナーなSSW に
よく見られるもので、個人的にはこのジャケットに打たれるものがありました。

 全12曲が収録されたこのアルバムの冒頭を飾るのは、地下室にいるような
実験的なエフェクトのなかを突き破るハーモニカで始まる「ささくれた風景」。 この曲
は、あえて奥まったような音像処理を施していたりと、意欲的な音づくりが感じられる
仕上がりです。 つづく「フィッシャーマン」はほのぼのとしたフォーキーなサウンド
ですが、潮田雄一ならではの味わいが感じられるのは中盤から後半のモノトーン
な楽曲だと思います。

   なかでも「物語」は途中で挿入される管楽器が印象的な佳作。 「睡魔」は
牧歌的なたたずまいが魅力的。 これらの曲に加え「夢をみた」などを聴いている
と、ここにある音楽が日本の音楽だとはにわかに信じがたい気にさせられます。
   そこにあるのは、Duncan Browne やErnie Graham の名盤に封印された
良質な SSWの肌触りです。

   また、彼のギターが堪能できる「墓場の猫」や「エンディング」といったイン
ストゥルメンタルが効果な順番に配置されているのも見事。 これらの曲は彼の
作曲能力の高さも感じさせます。

  なんかベタぼめな感じですが、これほど味わいの深い英国的な SSW が
現在の日本に存在しているというのが驚きです。 本人は、John Fahey に影響を
受けたらしいですが、そうしたルーツ・ミュージックへの関心やレスペクトだけでは
生まれてこない潮田雄一というミュージシャンの個性と才能には、これからも注目
していきたいと思います。





nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

Andy Shauf [CANADA]


Party

Party

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Anti
  • 発売日: 2016/05/20
  • メディア: CD


   久しぶりにあった人から、「これいいですよ。きっと気にいると思います」と
紹介されたアルバム。 そんなことを言ってくれることも気分がいいのですが、
そのアルバムが、本当にその通りだったので、幸せな気持ちになりました。

  Andy Shauf はカナダ出身の若手 SSW のようで、発売されたレーベル
は、Tom Waits などもリリースしているアメリカの ANTI 。 手触りのいい
ジャケットにデッサンのようなイラストだけで、期待感は高まりますが、その
内容は自分好みの内省的なサウンド。 今にも息絶えてしまいそうな儚さ
と、シンプルで朴訥としたサウンドが寄り添うようにからまって、まるで1970
年代のような淡い広がりを作り出しています。

  このようなサウンドを「アシッド・フォーク」と一言でくくってしまうのは、
もったいない気がします。 別に心が病んでいるわけでもなく、ましてや
ドラッグに頼っているわけでもなく、ただ生き方として、このようになるしか
なかったカナダの青年の心をそのまま受け止めて、リスナーは自分の
日常に薄いヴェールをかぶせるような仕草をしつつ、ゆったりコーヒー
でも飲むのがいいのでしょう。

  友達や恋人と聴くような音楽ではありませんが、季節の変わり目に
ふと立ち止まった自分に気がついたとき、Andy Shauf の「The Party」
が邪魔をせずに語らいかけてくるとすれば、そんな最高の演出を仕込んだ
自分自身をもっと好きになることでしょう。



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

Tobias Jesso Jr. [CANADA]


Goon

Goon

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: MUSICSTORE
  • メディア: CD



  カナダのバンクーバー出身の新進 SSW が2015年に発表したデビュー・アル
バム。 極力無駄を省いたシンプルなサウンドが話題になり、MUSIC MAGAZINE
などでも高い評価を得ていたような覚えがあります。

  「Goon」というタイトルのアルバム。 ジャケットに映った Tobias Jesso Jr. の
陰鬱な表情からは、自らの手で人生を終わらせてしまいそうな予感すら感じます。
その雰囲気はアナログ盤サイズのジャケットで見るとなおさらです。 Matthew Jay
みたいにならないでほしいと、余計な心配をしてしまいました。
  
  アルバムは「Can't Stop Thinking About You」に代表されるようなピアノの
弾き語りスタイルがほぼ全編を貫いています。 27歳で始めたというピアノは自分
でも弾けてしまうと思えるほど、音数が少なく、またゆったりとしたもの。 やや奥ま
った感じで録音したボーカルも、うっすらと陰りを感じさせ、かなり内向きな内容であ
ることは間違いありません。

  とはいえ、シンプルでわかりやすい楽曲が並んでおり、いつの間にかぐいぐい
と引き込まれてしまうような魔力がここにはあります。 全曲が彼のオリジナルです
ので、「Without You」、「Can We Still Be Friends」といった曲は有名曲のカバーで
はありません。

  「Holywood」という曲がとくに評価が高いようですので、興味ある方は下記をどうぞ。



  個人的にはこの曲。




Lantern Parade [JAPAN]

  
魔法がとけたあと

魔法がとけたあと

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ROSE RECORDS
  • 発売日: 2015/12/09
  • メディア: CD



  前回取り上げた、ランタン・パレードの最新作にして、最高傑作。 そして近年の
日本の音楽シーンのなかでも、傑出したクオリティのアルバムです。

  ジャケットを見れば、前作の延長線上にあることは容易に想像できますが、自分
は最初にこちらから入ったので、このアルバムの瑞々しい鮮度も含め、この「魔法が
とけたあと」の方にどうしても気持ちが入ってしまいます。

  2015年5月13日にレコーディングされたこのアルバム。バンドのメンバーも前作
と同様で、清水民尋(Vocal & Guitar)、光永渉 (Drums)、曽我部恵一 (Bass)、横山
裕章 (Piano)、高田陽平 (Percussion) の5人。 

  サウンドの指向は「夏の一部始終」をそのまま踏襲していますが、今作は曲の
メロディーセンスが前作をはるかに凌駕し、さらに歌詞の世界観や独特の表現も
切れ味を増したことから、個々の楽曲の完成度が奇跡的ともいえるレベルに達して
います。 

  なかでも「救いようがない」、「もしかしたら今も」、「たったひとつの朝」、「水たま
りは空の色」といった楽曲は、ランタン・パレードにしか描くことのできない不安や
希望、悲しみや喜びが、微妙な配分で混ざり合っていて、リスナーの心の奥底を
じんわりとつかみ取っていくことでしょう。

  ベストソングは「時のかおり」でしょう。 正直言って、この楽曲のすばらしさを
表現するすべが自分にはありません。 流麗なピアノに導かれ始まるこの曲は、
今世紀の日本の音楽シーンのなかでも指折りの出来映えです。 何も言うことは
ありません。

  最後に、このアルバムを知るきっかけをお話しします。

  昨年、自分が一番多く聴いたと思うのが、cero というバンドの「Obscure Ride」
というアルバムです。 めでたく、MUSIC MAGAZINE でも年間1位になっていまし
たが、まったく異論はありません。

  その cero が深夜に Inter FM で「ナイト・ドリフター」という番組を持っていて、そこ
でメンバーのひとりが紹介してくれたのです。 残念ながら番組は今年の春に終わって
しまったのですが、こういう巡りあわせは素晴らしいことですね。 メンバーのうち誰が
紹介したのかは覚えていませんが、そんなふとした奇跡が、自分の人生を少しずつ
変えていくのだなあと、しみじみ感じています。




Lantern Parade [JAPAN]


夏の一部始終

夏の一部始終

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ROSE RECORDS
  • 発売日: 2011/11/21
  • メディア: CD



  久しぶりの投稿です。

  最近は、日本のインディーズ・シーンばかり聴いていますが、そのなかには 50 を
過ぎた自分にもしっくりくる音楽が多く、最近の 20 代は凄いなあと感心させられています。

  その中でも秀逸なのが、京都を中心に活動している「ランタン・パレード」です。 
彼らはかなり多くのアルバムを発表しているようですが、今日ご紹介するのは 2011 年の
作品。 僕が買った彼らのアルバムとしては 3 枚目になるものです。

  「ランタン・パレード」は清水民尋を中心とするユニットで、アルバムによってはほぼ
彼一人の打ちこみサウンドのものが多いようです。  ですが、今日とりあげた「夏の一部
始終」はバンド編成によるもので、このバンドの静かなアンサンブルとともに、心に染み
いる SSW サウンドが堪能できる傑作となっています。

  バンドのメンバーは、清水民尋(Vocal & Guitar)、光永 渉 (Drums)、曽我部
恵一 (Bass & Chorus)、横山裕章 (Piano)、高田陽平 (Percussion) という
編成。 曽我部恵一以外はどんな活動をしてきたミュージシャンなのかはわかり
ませんが、この5人がかなり奇跡的なサウンドを作り出しています。

  とりわけ、横山裕章のピアノと高田陽平のパーカッションが秀逸で、このアルバム
の色あいを作りだしています。 淡くてせつない、朴訥としながらも意志の強さを感じる
清水民尋のボーカルとの相性は聴く人のこころをつかんで離さないことでしょう。

   ♪ 誰かが人生に幻滅する、どこかで人生に幻滅する ♪ といった青臭い歌詞
がすっと心にはいってくる『誰かが世界に』は、まるで1970年代かのような風情を感じ
させますが、そこにないのが古い畳のカビ臭さ。 やさぐれたりせずに淡々と歌われ
る背景に、ボサノバ風なアレンジや流麗な演奏があるので、懐かしさと新鮮な思いが
同居したような気分にさせられます。

   ♪ 夢が見れない。今やるべきことを、ただやるだけ ♪ と歌う『夏の一部始終』
は、歌詞だけ見ると人の背中を押す応援ソングのようで、ふだんの自分ならば吐き気
を催すのですが、そうならないのです。 ここでは、自分自身に言い聞かせるだけの
ために書かれた内省的なメモを燃やす前に朗読しているかのように思えて、妙に聴き
入ってしまいました。 ひょっとして自分のなかに埋没していた何か大事なものをこっ
そりと掘り起こされてしまったかのような錯覚を覚えるのです。

   そんな素晴らしいアルバムですが、残念なのは、ややボーカルが不安定で
それが魅力とはわかっているものの、低音の部分をもう少し丁寧に録音しておいて
ほしかったなあと感じる部分が数か所あることです。 しかし、そんなことすら創作者
の意図かもしれませんし、リスナーが文句を言う場面ではないことも承知しています。

   このあと、「ランタン・パレード」はこの「夏の一部始終」の続編的な内容の
アルバムを2015年に発表しますが、それこそが奇跡的な最高傑作となりました。
   近日中にここで取り上げたいと思っています。




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

The Autumn Defense [USA]


Once Around

Once Around

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Yep Roc Records
  • 発売日: 2010/11/11
  • メディア: CD


   Wilco のメンバー 2 人が組んだ癒し系のフォーク・ユニットが来日すると
いうニュースをネットで知ったのが今年の初頭。 ちょうど予定がなかったので、
当日券で渋谷クラブクアトロに駆け込んだのが 14 日でした。 

   これが何という幸運でしょうか。 自分がある意味理想としていた音楽の
エッセンスが全編にわたってちりばめられた至福の時間だったのです。

   あわてて、The Autumn Defense の CD を全部買おうと決めたものの、入手
困難なものもあって、まだ3枚しかそろっていません。 しかし、どれもこれも最高の
仕上がりで甲乙つけがたいものになること必至だと思います。 そんななかでも
個々の楽曲のクオリティー、とくに覚えやすさでは、この 2010 年の「Once Around」
が抜きんでているように思います。 ビートルズやニルソンのような親しみのある
メロディー、繊細なボーカルとやすらぎのコーラス、ひっそりと遠慮がちな演奏など
が見事なバランスで融合しており、ほぼ完ぺきな作品と言っていいでしょう。


   僕はこんなアルバムを待っていたのです

   簡単にメンバーを紹介すると、The Autumn Defense はWilco の前身バンド
Uncle Tupero 時代からのメンバー、John Stiratt と Patrick Sansone による
ユニット。 Patrick は The Autumn Defense の2枚目を発表したあとに、Wilco
に正式加入したとう経歴の持主です。 Wilco でもサウンドの核をになう二人が
Jeff Tweedy と距離を持って、リラックスしながら作り上げたのが The Autumn
Defense といえるでしょう。

   今まで知らなかったことを強く後悔していますが、まだ知らない人には
自信を持ってお薦めしたい大人の癒し系サウンドです。


ナカヒラミキヒト [JAPAN]

  
夜の囚人

夜の囚人

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SAMURAI RECORD
  • 発売日: 2013/02/02
  • メディア: CD


   新宿区のこじんまりしたとある飲み屋街の奥深いところにあるバーで流れて
いたのが、この「夜の囚人」でした。 こちらも酔った勢いで入った二軒目。カウンター
に8人くらいしか座れないという小さなバーにお似合いなアルバム、そして運命的
な出会いでした。

  ナカヒラミキヒトという日本のブルース・シンガーは、そのしゃがれた声が印象的
で、「日本のトム・ウェイツ」と呼びたくなるようなたたずまい。 まさに夜の奥深くで
聴かれるべき音楽です。 こんなミュージシャンがインディーズでCDをリリースして
いるとは驚きでしたが、日本の音楽シーンがそのような環境になってきていること
にも同じくらい驚きました。

  その彼のアルバムのラストが素晴らしいカバーでして、その名も「ピアノが
酔っているんだ~俺じゃねぇ」です。 Tom Waits を聴いたことがある人であれ
ば、これが彼の ♪Piano has been drinking♪ のカバーだということは、すぐに
わかるはず。  ですが、この出来栄えの秀逸さは、何としてでもいちど聴いて
もらいたいものです。 僕はこれをもう一度聴くために、Amazon でさっそく購入して
しまいました。 しかし、すでにあまり流通していないらしく中古のマーケット・
プレイスからの入手でした。 僕が買ってしまったので、もうないかもしれません。
インディーズ盤はあるうちに買え、が鉄則ですので、ネットで探してなんとか入手
されることをお薦めします。 もちろんこのブログに反応されたコアな音楽ファン
だけに言っている話ですけど。

   ちなみに、このアルバムに出会ったお店で来年の2月9日にライブがある
ようです。 興味のある方は、この限られた情報で探してみてください。


   




John Fullbright [USA]


From the Ground Up

From the Ground Up

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Blue Dirt Records
  • 発売日: 2013/03/07
  • メディア: CD


   驚きました。 この作品が2012年のものだとは。

   パッケージやたたずまい含めて、完全に1970年台の古き良き スワンプ系のSSW
サウンドそのものです。 ロックバーで50過ぎの音楽好きのおやじさんたちに聴かせたら、
まちがいなく「これ誰だったっけなあ?」とか「トニー・ジョー・ホワイトかなあ」といった感想
が聞かれるに違いありません。

   生まれてくる時代を40年ほど間違った今日の主人公 John Fullbright はオクラホマ
出身のシンガーソングライター。 なんとまだ20代ということで、この老成ぶりが信じられ
ません。 基本ギターかと思ったら、ピアノ弾き語りの曲もあったりして、なかなか器用な
ミュージシャンのようです。 迫力のある堂々とした歌いっぷりもかっこよく、ライブで見たら
そうとうしびれるだろうなと思います。 

   実は、まだアルバムを聴いている途中でこれを書いていて、最後までたどりついて
いないのですが、その段階で自信をもって名盤だと宣言します。

   最近、いい音楽がめっきり少ないなあと感じていたり、買っているのは再発CDばか
りという人はぜひともこの素晴らしい音楽に接してもらいたいと思います。


Prefab Sprout [UK]


Crimson / Red

Crimson / Red

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Icebreaker Records
  • 発売日: 2013/10/08
  • メディア: CD



クリムゾン/レッド

クリムゾン/レッド

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2013/10/23
  • メディア: CD


   前作「Let's Change The World With Music」が事実上の最終作だと思って
いた Prefab Sprout の新作が発売されました。 7月くらいからネットで噂になって
いたものですが、実際に手元にCDが届くと、感慨深さはひとしおです。

   驚いたのはそのタイトルで「Crimson / Red」というもの。 Robert Fripp 師匠
が知ったらどんな反応するのか見ていたいですが、「深紅色 / 赤」ということで、
ジャケットの色合いも含めて、しっかりとした意味合いが込められているタイトルなの
だと思います。 手にした輸入盤のブックレットには、仙人になったような Paddy
McAloon のお姿がおがめるものの、肝心の歌詞は記載されていませんでした。
どこかの曲のなかに、Crimson / Red の謎が隠れているに違いないと想像して
いたので、これには少々がっかり。 今月23日に発売される国内盤を期待すること
にしましょう。

  と書きつつ、何度もくりかえし聴いていると、たしかに Crimson / Red と歌っている
曲を発見しました。 中学生程度のヒアリング能力があれば確認できるものなので
自慢できるほどではありませんが。 その楽曲は「Adolescence」という曲です。
「思春期」という意味のその曲の最後で、♪adolescence crimson red ♪とたしかに
聴き取れます。 その前には Romeo and Juliet というフレーズもあったりして、この
曲の歌詞の全体像がものすごく気になるところです。 早く歌詞が知りたいですね。

  さて、このアルバムは2012年の8月に行われ、すべてがPaddy ひとりの手に
よるものだそうです。  最初に聴いた時には、ちょっと地味な印象を持ちましたが、
何度も聴くにつれて、その魅力に取りつかれてきました。
  それはこのうえない喜び。 それは現代最高のソングライターであり、もっとも
好きなミュージシャンから届けられた今年いちばんの宝物でした。


Sam Amidon [UK]


Bright Sunny South

Bright Sunny South

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Nonesuch
  • 発売日: 2013/05/20
  • メディア: CD


   タワーレコード渋谷で発見した SSW を紹介します。最近は、若手の SSW の
気になる作品が多いのですが、あえて地味な印象だったこのアルバムだけをチョイス
しました。

  その理由はジャケットが気にいったことと、レーベルが Nonesuch だったことの
ふたつです。 Nonsuch は僕にとってはベテラン・ミュージシャンの終の住家という
イメージで、そこから見知らぬ若手の SSW が出てくるとはかなり意外でした。

   ところが、この Sam Amidon はすでにアルバム 5枚も発表している中堅とも
いえるミュージシャンで、この「Bright Sunny South」が Nonesuch 移籍第一弾と
なる通算 6枚目だったのです。 Wikipedia などによると、アメリカ出身だが現在は
イギリスに移住して活動中とのこと。 そしてイギリスの SSW である Beth Orton
の旦那さんでもあるといことが判明しました。 Beth Orton は姉さん女房なのでしょう
かね。あんまり関心ありませんが。


   さて、このアルバム。 予想をかなり裏切るまどろみ感でした。 朴訥とした
語り部のようなボーカルが、アコースティックなサウンドをベースに淡々と展開
されていきます。 曲によっては、Nick Drake のように聴こえますし、Duncan
Browne のようにも、いやそれはないか...。
   いずれにしても、Sam Amidon がアメリカでなくイギリスを活動の地に選らん
だことが妙に納得できるのです。 どんよりした曇り空のもと、やることのない退屈
な時間だけがゆるやかに過ぎていきます。 そんなときのお供として、いかがで
しょうか、とすすめられているような感じ。 リズムセクションが排除されていること
もあって、メリハリも少なく、時折 Bon Iver 的な音響的なアプローチが施される
ことを除けば、目新しい要素も感じることはありません。

  うっかり他のことをしていると終わっていることすら気がつかないような全
11曲。 おそらく40分くらいの長さでしょう。

  このアルバムを広くおすすめすることはありませんが、1970年台の陰鬱系
な SSW が好きだと自負されている方には、そっと差し出してあげたくなるよう
なアルバムです。 




The Milk Carton Kids [USA]


Ash & Clay

Ash & Clay

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Anti
  • 発売日: 2013/03/26
  • メディア: CD


   どこかのサイトか、CDショップの店頭かで、「現代のサイモンとガーファンクル」
と紹介されていた新人二人組のデビュー作。 安易なキャッチコピーには心は動か
なかったのですが、この淡いジャケットとバンド名、そしてタイトルからして、ある程度
想像できるなあと思って手にしてみました。

  このジャケットは、イギリスのネオアコ・バンド「Eyeless In Gaza」の「Back
From The Rain」 をおとなしくしたような印象です。 紙ジャケットの肌ざわりも
アナログ・レコードのぬくもりを感じます。

  そんな The Milk Carton Kids は Kenneth Pattengale と Joey Ryan
によるアコースティックなデュオ。  ほとんどの楽曲でふたりがハーモニーを
奏で、美しいギターの音色とボーカルだけの淡いサウンドが延々と繰り広げ
られます。 クレジットには、Kenneth が1954年製の Martin 0.15を、Joey が
1951年製の Gibson J45 を弾いていることが自慢げに明記されており、その
ギターを大切に保管しメンテナンスしてきた Norik Renson なる人物の好意
であることもさりげなく触れられています。

   こうしたビンテージ楽器の代表格はもちろんヴァイオリンですが、ポピュラー
音楽の世界でも徐々にこうした現象が見られてくるのでしょう。 デジタルに
慣れきった音楽シーンへのアンチテーゼなのか、アコースティックなサウンドを
追及した先にたどりついた原点回帰なのかはわかりませんが。

   さて、このアルバム。 何と言えばいいのか、悪くはないのですが、さすが
にメリハリ不足という印象はぬぐえません。 午後の紅茶タイムのようにまどろむ
気分には最適なのですが、そのまま眠りに落ちてしまることを推奨しているかの
ような作品に仕上がっています。

   昨今では、アコースティックなグループがグラミー賞をもらったりしているので
、そうしたマーケットを虎視眈々と狙っているのか、趣味が高じてデビューにたどり
ついただけなのか、まったくわかりませんが、彼らの実力と行く末については、
もっとわかりません。 

   気にはなるので、次の作品が出たら必ずチェックしようと思いますけど。
そういえば、Williams Brothers という似たようなバンドがいましたね。 ふと思い出し
ました。 彼らは何をしているのでしょうか。



Snow Goose [UK]

   
Harmony Springs

Harmony Springs

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Pid
  • 発売日: 2012/11/20
  • メディア: CD


    タワーレコード渋谷店でジャケットに一目ぼれ。 タイトルを見て興奮。 そして
すぐにレジへ直行。 という術中にはまった模範的なお客さんになってしまったアルバム。

    これが買って良かったのです。

    「Snow Goose」と言えば、叙情派プログレのキャメルの代表作として名だたる
作品。 ポール・ギャリコの同名の小説をモチーフとしたトータル・コンセプト・アルバム
でした。 「ラヤダー街へ行く」といった印象的な楽曲も思い出されます。
    その「Snow Goose」がバンド名、タイトルが「Harmony Springs」とあっては、
さぞかし美しいサウンドなのだろうと容易に想像できますし、このかわいらしいジャケット
に包まれていると知れば、その確信は100%へと近づいて行きました。
    
    これがいい意味で予想を裏切ったのは、最近ありがちな懐古的な SSW では
なく、1970年代初頭の正統派のトラッドだったのです。 Sandy Denny がいたころの
Fairport Convention に代表される血筋をみごとに受け継いで現代に蘇らせたのが、
この Snow Goose の会心のデビュー・アルバムと言えるでしょう。

   落ち着いたアコースティックな演奏をバックに、Anna Sheard の清楚なボーカル
がふわりひらりと舞うような様は、まさに英国的。 まどろむ午後であればたっぷりと
そそいだ紅茶を飲みながら、一人の夜更けであれば、十分に熟成させたシングル
・モルトでも口に含みながら聴きたくなるような品のいい音楽がここにはありました。

   メンバーは、Jim McCulloch、Dave McGowan、Anna Sheard、Raymond
McGinley、そして Stuart Kidd という5人ですが、Raymond が参加しているのは
「Harmony Springs」と「Shifting Sands」の2曲のみでした。 不思議に思って
クレジットを見ると、Recorded and mixed by Raymond McGinley とありました
ので、そちらの貢献が大きいのでしょう。

   さて、この Raymond McGinley という名前。 なんか見覚えあるなと思ったら
なんと Teenage Fanclub のメンバーのレイモンドだったのです。 なるほど、一人
ベテランとしてアドバイザー的に参加しているのでしょう。 そして、よく見ると
「Harmony Springs」には同じく Teenage Fanclub の Norman Blake もコーラス
で参加していました。 これはネオアコファンにはたまらないネタになりますね。

   こんな素敵な出会いがあるなんて、やはりタワーレコードのような大型のお店
はいいですね。 今回も渋谷店には感謝です。 リンクは Amazon ですけど、できれば
実際の店頭で発見してあげてください。 実物のほうが、ここでのジャケット写真よりも
ずっと淡くて清潔な色をしています。


Johnny Marr [UK]


Messenger

Messenger

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: New Voodoo
  • 発売日: 2013/03/12
  • メディア: CD


   言わずと知れた The Smiths のギタリスト、Johnny Marr が49歳にして初めての
ソロ・アルバムをリリースしました。 これは見逃すわけにはいきません。
   Wikipedia を見ると、The Smiths 以降はいくつかのバンドやユニットに参加して
いたようですが、Johnny Marr 自身が主役となっていたのは2003年の Johnny Marr
and the Healers だけのようです。
   The Smiths は、Morrissey と Marr の双頭バンドでしたし、何よりもソング・
ライティングと独特の流麗なギターストロークでの貢献は絶大でした。だからこそこの2人
がかみ合わない以上は The Smiths の再結成はありえないし、期待よりも絶望のほう
が優っているのです。

   そんななかで唐突に発表されたソロ。 だいぶ前からレコーディングの噂は聴いて
いたものの、実際に手にとって、聴いてみると味わいと感慨が交錯するような気分です。

   サウンドは、予想したよりも元気でパワフル。 もっとオヤジ臭くスロウやミディアム
な楽曲が多いのかと思いましたが、そうでもなく Johnny Marr のギターが存分に堪能
できる作品となっていました。 ざっと聴いたくらいでレビューするのもどうかと思いますが、
「European Me」、「Lockdown」、「Generate! Generate!」、「New Town Verocity」
などは、往年の颯爽としたギターが心地よく耳に残ります。 
  ロンドンとベルリンでレコーディングされたこのアルバム。モノクロのジャケットの
イメージと重なり、なんとなく耽美的な空気感もただよっています。
  プロデュースは Johnny Marr と Doviak と書かれています。 この人は誰でしょう
か。バックボーカルも担当しているようです。 気になる参加ミュージシャンは、ベースに
Max James 、ドラムスに Jack Mitchell となっており、そのほかの楽器はすべて
Johnny Marr によるオーバーダビングです。 バックボーカルに Sonny Marr と
あるのは娘さんでしょうか。  Atomosphere guitar (雰囲気ギター?)として、
「European Me」と「New Town Verocity」には、息子と思われる Nile Marr も参加
しています。

   49歳と言えば、子供が成人していてもおかしくないいい中年です。 この年齢での
ソロ・デビューを子供たちはどう感じているのでしょうか。 そんな余計なことを考えてしまい
ますが、是非ともフジロックあたりに来日してもらいたいものです。


The Civil Wars [USA]


Barton Hollow: International Edition

Barton Hollow: International Edition

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony Import
  • 発売日: 2012/03/06
  • メディア: CD


   昨年のグラミー賞で「ベスト・フォーク・アルバム」と「ベスト・カントリー・デュオ・
グループ・パフォーマンス」の2部門を獲得した男女のユニット。 1年遅れで今ごろ
手にしました。 ガラス窓越しにカフェの店内を映したと思われるモノクロのジャケット
に惹かれてのことです。

  しかし、このユニットは Joy Williams と John Paul White の不仲により、ツアー
が途中でキャンセルになり、修復不可能な状態に陥っているとのこと。 男女の仲では
よくあることですが、二人はこの作品をどのように感じ取っているのでしょうか。 懐か
しい思い出となるのか、忌々しい遺物となるのか、ちょっと興味があります。

  さて、そんな後日談を知ることもなく、素直にアルバムに接するならば、非常に質素
で良くできた作品だと思います。 ダルシマーなどは入ってきませんが、アパラチアン
の針葉樹林の香りがします。 レコーディングはカントリー・ミュージックの聖地ナッシュ
ビルなのですが、もっと北の寒い土地で録音したかのような凍えたイメージが、アルバム
全体に付きまといます。 似ている感じでは、Swell Season が好きな方には間違いなく
お薦めできると思います。

  次の作品が生まれる見通しのない The Civil Wars ですが、まったくバンド名が皮肉
ですね。 二人で市民戦争している場合ではないのに。


Ron Sexsmith [USA]


Forever Endeavour

Forever Endeavour

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Mri Associated
  • 発売日: 2013/02/05
  • メディア: CD


   アルバムが出るたびに迷わず購入する数少ないミュージシャン、Ron
Sexsmith の新作です。 もう何枚目になるのかわかりませんが、そろそろ
10枚くらいになるのでしょうか。 気になる人は Wikipedia へ直行してください。

   さて、そんな新譜に期待することは、一定の品質保証と、切れ味のある
いくつかの楽曲の存在、という2点に絞られます。 前者に関しては、迷わずに
購入する側の責任もあるし、彼の音楽を長く聴き続けている人であれば、問題
ないことは明らかです。
   となると、問題は後者なのですが、これまで数回聴いた限りでは、パソコン
のキーボード入力を止めてしまうほどのインパクトのある楽曲は見当たりません。
もちろん、ふんわかした流れとかアレンジは申し分ないのですが、泣く子も黙る
ような曲はどうやら存在しません。 するめのように味わいは徐々に増してくるの
でしょうが、食べた瞬間に「旨い!」というものではないようです。
   それが、Ron Sexsmith だよ、言われればその通りなのですが、最近の
David Mead などでスゴイ1曲があったりするのと比較すると、やや物足りなさを
感じてしまいました。

  プロデュース、アレンジ、そしてキーボードで Mitchell Froom が全面参加。
ドラムスに Pete Thomas、ベースに Davey Faragher などおなじみのベテランも
名を連ねています。 

   その安心感もそえて、着実なお買物としていかがでしょうか。


Don Peris [USA]


Brighter Visions Beams Afar

Brighter Visions Beams Afar

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Stella
  • 発売日: 2011/12/11
  • メディア: CD


   西荻窪に「雨と休日」という小さなセレクトCDショップがあることを、数か月前
に知りました。 それから、行きたいとは思いつつ機会がなかったのですが、先週
の土曜日に、偶然ですが同窓会が西荻窪で開催され、その店にいく途中で発見
することができました。

   わずか4畳半くらいの広さに、30タイトルくらいを厳選してレコメンドするその
お店のスタイルに驚かされたのですが、すぐに目についたのが、このブログでも
絶賛したことのある Don Peris の「Go When The Morning Shineth」でした。
「ふむふむ、いいセンスしてるな」と思って近寄ったところ、その隣においてあった
のが、Don Peris のクリスマス・アルバムだったのです。

  こんな陸奥A子の初期の少女漫画のような出会いで手にしたアルバム。12月
に入ったこの季節でもあるので、悪かろうはずがありません。我が家の今年の
クリスマスの BGM はこの CD に決定です。

  全曲、Don Peris の 繊細なギターで綴られた全 15 曲。 なかには、「エリーゼ
のために」のような、クリスマスとは縁のなさそうな曲もありますが、暖房で暖まった
部屋で、キャンドルを見つめながら静かに過ごすための作品集となっています。

  このような素敵なアルバムは人生の宝物として、そっと大切にしておきたいです
ね。 国内盤の帯には「大切なひとにそっと耳打ちして教えたくなる、そんな作品
です」 と書かれていますが、まさにそのとおり。 
   ブログに書いてしまってすいません、という感じですが、それほど読者も多く
ないので、じわっと伝わればいいかな、と思います。

   早いもので、今年ももうすぐ終わりですね。

Lucy Rose [UK]


Like I Used to: Deluxe Edition

Like I Used to: Deluxe Edition

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony UK
  • 発売日: 2012/10/16
  • メディア: CD


  ジャケット買いしなさい、と言われているようなアルバムを発見。

  いかにもイギリスいう感じの緩やかな丘陵と曇り空の下に寝転ぶ彼女こそ
が新人女性 SSW の Lucy Rose です。 名前もかわいらしく、期待感は
いやおうにも高まったこのアルバム。 結論から言うと、ものすごく完成度が
高かったわけではないけど、今後の成長に期待の持てる新鮮なデビュー作品
でした。

  Rumer に近い感じかと思って、アルバムを聴いてみると、もっとはかなく
弱々しく、頼りなげなボーカルが全編を漂っていました。 口を大きく開けた
ことがないんじゃないかと思うような、ウィスパリング系と言っても言い過ぎでは
ないと思います。 そうした彼女のボーカルを活かすために練られたアレンジと
演奏はさすがといった感じですが、そうなると決定力の差は個々の楽曲の
クオリティに依存することになります。 

  ここで、すこし黙ってしまう感じ...それこそがこのアルバムの印象です。
冒頭の「Red Face」のバタバタした感じ、つづく「Middle Of The Bed」も、Kate
Bush が歌うんだったらいいけど、Lucy Rose でどうなの? という無理な
ことを承知で言う親父のような感想をもってしまいました。

  ただ、アルバムは後半になればなるほど、曲も良くなってきて、味わいも
深まってきます。 心地よい疾走感のある「Place」、静かと動のコントラスト
が際立つ「Don't You Worry」、「First」と流れていくあたりが、このアルバムの
ハイライトでしょう。 ただ、あまりにも口数が少なくおとなしめのたたずまい
なので、好き嫌いは分かれるタイプのSSWであることに間違いありません。

  ライブが見たくなるタイプでもないし、ドライブに似合う音楽でもありません。
聴いているうちに、うとうとしてつい眠ってしまったというような、軽い関係が
似合うように思います。 

  この傾向で次に向かうのか、修正してくるのか、興味深い Lucy Rose の
ひっそりとしたデビューでした。

  ちなみにデラックス・エディションには4曲のボーナス・トラックが収録されて
いて、お薦めです。



Neil Halstead [UK]


Palindrome Hunches

Palindrome Hunches

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Republic
  • 発売日: 2012/09/11
  • メディア: CD


   この秋、最大の収穫ともいえる偉大な SSW アルバムに出会いました。

   もとは、1980 年代の終わりから活動していたイギリスのオルタナティブ系バンド
Slowdive の主要メンバーだったという Neil Halstead の最新作は、清楚で気品の
あるアンティークな家具のような深い味わいに満ちた傑作でした。

  Neil Halstead のことは詳しく知らないまま、CD ショップの片隅で発見したこの
アルバムは、ペーパースリーブのジャケットの手触りが、そのままサウンドに結びついた
ような感触です。 ギターとボーカルの Neil を核としながら、曲によっては Paul Whitty
の淡いピアノ、Ben Smith の絹のようなバイオリンなどが、風景画の背景を描くかのよう
に輪郭を染め上げていきます。 そのなかで、消え去ってしまいそうな、はかない Neil
の歌声が、秋風のように耳の脇を通り抜け、この季節がゆえにもたらされる理由もない
物悲しさに包まれていきます。

  なんという空間でしょう。 始まりも終わりもない短編小説を呼んでいるかのような、
時間が静かに流れ、しらずしらずに過ぎ去って行きました。

  個々の楽曲が淡々と進んでいくために、何曲目がどうだとか、そんなことはこの
アルバムにはふさわしくないように思います。 
  ただ、あまりにもヒントがないといけないので、たとえば Duncan Browne の1969
年の名作「Give Me Take You」を持っている方ならば、間違いなくお薦めできる作品
です。 Nick Drake ファンにも向いていると思います。 近年では、このブログでも
取り上げたことのある Boo Hewerdine や David Lewis のサウンドに同じエッセンス
を感じます。 アメリカではなくあくまでも英国的ですね。

  最後にひとつだけコメントを。
このアルバムに関してのアマゾンのユーザーレビューがひとつありました。 このような
マイナーな作品に対してレビューを書かれるのはとても良いことだと思いますが、その
タイトルが「需要はあるのか」というのはちょっと残念でした。 また、「この手のカントリー
が好きな人なら...」という表現がありますが、それは誤解ですね。
  この音楽はカントリーではありません。 フォークもしくは SSW アルバムです。
さらに言うならば、英国特有のトラッド感もそれほど強くありません。 したがって、僕は
このレビューに対して「参考にならない」のボタンを押しておきました。



前の20件 | -

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。